京都外国語専門学校東南アジア言語学科タイ語専攻専任講師・一宮孝子 東南アジア言語学科タイ語専攻講師 一宮孝子
1994 年大阪外国語大学タイ・ベトナム語学科卒業。
1996 年同大学修士課程修了。
1996 年〜 97 年タイ王国チュラーロンコーン大学留学。本校創立時から常勤講師を務める。
2003 年から日本タイクラブ理事。
著書/『日・タイ表現例文集』(共著・大阪外国語大学)、
『ゴーガイ:タイ文字の読み書き』(共著・東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所)
一宮孝子先生が贈るタイ語ワンポイントレッスン(中級編)
タイ語概説
ここで言うタイ語とは、中国・ラオス・ビルマなどを含む広大な地域で話されているタイ諸語あるいは広義のタイ語(Tai Language)ではなく、狭義のタイ語(Thai Language)であり、タイ国の国語を意味する。
大きな特徴としては、

   1.各語彙が単音節的であり、
   2.各音節に声調があり、
   3.孤立語である、ということである。

音節構造は「子音+母音+子音/声調」の型をとる。また孤立語というのは膠着語である日本語のようなテニヲハや活用形がなく、各語の文法的役割は、文中における語序によって決定される言語である。つまり基本文型である「主語+動詞+目的語」のどの語序にあたるかによって、その語の文法的役割が決定されるということである。
また、冠詞や性、格、時相による語尾変化もなく、動詞は時相の観念と伴わない。


タイ語の文字と発音
ここでは、先に述べた音節構造「子音+母音+子音/声調」の先の子音を頭子音、後の子音を末尾子音と呼ぶことにする。
先ず頭子音は単頭子音と二重頭子音が存在し、文字と発音については次に示す通りである。

単頭子音



なお頭子音は以下の3種類に分類され、どのグループに属するかが声調決定の際に大きな役割を果たす


二重頭子音



次に母音は下に示す真正母音、複合母音と余剰母音の3種が存在する。なおここで示す―は頭子音字の位置を、発音記号においては短母音は発音記号1文字、長母音は発音記号2文字で示すこととする。タイ語においては短・長母音の区別が厳格で、短・長母音の差により全く違った語となる。

真正母音 複合母音

余剰母音



そして末尾子音は以下に示す通りである。




最後に声調は次に示す5種類が存在し、4種類の声調符号を用いる。

声調 声調符号



さらに声調については、頭子音字の種類、母音の長・短、末尾子音、声調符号のすべてが互いに関連し合って決定される。なお二重頭子音における頭子音の種類は先、つまり左側の子音文字の種類に従う。

声調決定の規則


タイ語の語彙の特徴
タイ語に元来から存在する語彙、いわゆる純タイ語における語の派生は主として語の複合によって起こる。例えば、<水>を用いたものは以下のようなものが挙げられる。




タイ語の借用語についてはサンスクリット語やパーリー語などからのものが多い。これらに関してはタイ語の特徴である単音節語の特徴はあまり見られない。サンスクリット語に関しては、タイ人の名前に好んで用いられている。以下にサンスクリット語及びパーリー語の借用例を挙げる。




さらに後で述べるが、人称代名詞と文末詞が人間関係や感情を示すのに大きな役割を果たす。その他にタイ語には、国王をはじめ、王族、高官や僧侶に話しかけたり、言及したりする時には、「王語」と呼ばれる特別の語彙を用いる。これらの語源はクメール語が主な源となっている。



タイ語の文法
タイ語は先にも述べたように孤立語であるため、性、格、時相による語尾変化はなく、動詞に時相の観念も伴わない。品詞は語序によって決定される。例を挙げると次のようである。

<私 (男性)> (〜という名前である) <ジロウ>
→私の名前はジロウです。


<私 (男性)> <知る> <名前> <彼、彼女、彼ら>
→私は彼(彼女、彼ら)の名前を知っている。



日本語においてもいささか厄介な助数詞が、タイ語においても類別詞と呼ばれて存在する。さらにタイ語のそれらは日本語の助数詞よりも種類が多い。

<本> <3> <冊>
→本3冊
<万年筆> <2> <本>
→万年筆2本
<服> <4> <着>
→服4着



人称代名詞文末詞は様々な間柄や性格、感情などを示すのに大きな役割を担っている。
例えば、

<お前> <する> <何> <(ぞんざいさを示す下品な文末詞)>
→お前何やってるんだ!

<何> <(親しみを示す文末詞)>
→なあに?

<〜さん> <父> <あなた様> <(否定詞)> <元気な> <(男性用丁寧の文末詞)>
→あなた様のお父様は御病気でいらっしゃいます。

<あの方> <(否定詞)> <居る> <(女性用丁寧の文末詞)>
→あの方はいらっしゃいません。



修飾語については「被修飾語+修飾語」の語順である。

<色> <鮮明な>
→鮮明な色
<人> <美しい>
→美しい人



否定詞については否定したい語順の直前につける。

<彼、彼女、彼等> <(否定詞)> <話す> <〜語> <日本>
→彼(彼女、彼等)は日本語を話さない。

<彼、彼女、彼等> <話す> <〜語> <日本> <(否定詞)> <(可能の助動詞)>
→彼(彼女、彼等)は日本語が話せない。



疑問文については、イエスかノーかの答えを求める疑問文については文末に疑問詞を配することで疑問文となる。

<あなた> <(意志の助動詞)> <行く> <(文末疑問詞)>
→あなたは行くつもりですか。

<(否定詞)> <暑い> <(文末疑問詞)>
→暑くないですか。

<あなた> <〜である> <〜人> <日本> <(文末疑問詞)>
→あなたは日本人でしょう。



さらに英語でいう5W1Hの疑問文は、文中に該当する疑問詞を配することで疑問文となる。

<あなた> <(意志の助動詞)> <行く> <〜と> <誰>
→あなたは誰と行くつもりですか。

<家> <あなた> <ある> <何処>
→あなたの家はどこですか。

<あなた> <(意志の助動詞)> <行く> <いつ>
→あなたはいつ行きますか。

<買う> <何> <来る>
→何を買って来ましたか。

<なぜ> <彼、彼女、彼等> <(否定詞)> <来る>
→なぜ彼(彼女、彼等)は来ないのですか。

<あなた> <(意志の助動詞)> <行く> <どのように>
→あなたはどうやって行くつもりですか。


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