2012年09月26日 (ベトナム編)映画で見るベトナム語(5)

★コウノトリの歌(ジョナサン・フー/グエン・ファン・クアン・ビン 2001年 ベトナム=シンガポール合作)

 この作品は、前回まで紹介してきた3作品とは異なり、1975年まで戦われたベトナム戦争を題材に、ベトナム人スタッフによって制作・公開された初の作品だと予告編で謳われたものです。ベトナム戦争映画と言えば、もっぱらアメリカ側の視点から撮影された作品ばかりでしたが、その意味で、ベトナム人自身の視点から描かれたこの作品の意義はとても大きいものです。

 人間にとって戦争とは何なのか自ら考えよ、と何か鈍いものを胸元に突きつけられるような気にさせられる作品に仕上がっています。

 今日のベトナムは、既に戦後30年を過ぎ、戦争を知らない世代が人口の大半を占めるという現状で、戦争体験が「歴史」の彼方へと埋没する現実に直面しています。いい面と悪い面と両方があるとは思いますが、このような作品が意味を持つのもそういう文脈に依存しているというあたりが皮肉なような気もします。



コウノトリの歌(2001) - goo 映画


(了)

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